入管難民法改正案、国会で17日、可決 成立

指紋・顔写真は、犯罪捜査に利用すると明言されていた入管難民法改正が2006年5月17日 成立した。

入管収容施設問題を考える、アリさんとジェインさん
http://hw001.gate01.com/sasara/nyukan/

改正入管法が成立 テロ対策強化 指紋・顔写真義務付け/強制退去規定
2006年5月17日
 テロ対策を強化するため、日本に入国する十六歳以上の外国人に指紋採取や顔写真撮影を原則として義務付ける改正入管難民法が十七日午前の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。法相がテロリストの恐れがあると認定した者は、強制退去処分にできる規定も新設。来年十一月までに施行される。
 改正は、米中枢同時テロを踏まえ、政府が平成十六年十二月に策定した「テロの未然防止に関する行動計画」に基づく措置。ただ、在日韓国・朝鮮人特別永住者、外交官や国の招待者については対象外とした。
 指紋などの情報はスキャナーなど「電磁的方式」によって採取。その情報はコンピューターでデータベース化され、犯罪捜査にも利用される。強制退去は、生体情報の提供を拒否した場合も命令できる。
 政府は改正で、別人に成り済ましたテロリストの入国を阻止できるとしている。ただ、犯罪に無関係な観光客らも指紋採取が義務付けられるため、日弁連は「外国人全体が危険であるかのような偏見を生む恐れがある」と批判している。
産経新聞) - 5月17日16時21分
 



 
入管難民法改正案 
外国人、専門家ら危惧の声
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060516/eve_____sya_____003.shtml
 国際テロ対策の強化を目的に、外国人(十六歳以上)の入国時の指紋採取“復活”や顔写真の撮影などが盛り込まれた入管難民法改正案−。外国人のみへの適用とあって関心の薄いまま衆議院を通過、参議院でも可決、成立する運びとなった。外国人や専門家からは「単なる外国人問題ではない。市民監視の強化であり、共謀罪(が抱える問題)と根は同じ」などと危惧(きぐ)する声が上がっている。

 ◇“押なつ”にNO

 「捕まった時はよろしく頼むねと仲間に伝えています」。甲南女子大助教授で日系二世のブラジル人のリリアン・テルミ・ハタノさん(38)は、憂い顔で“覚悟”を語る。

 ブラジルへの帰郷や出張など、海外と行き来する機会が多い。入国の際に指紋採取を迫られたら、リリアンさんの態度は「NO」だ。

 「日本がいかに排外的な政策を実行しようとしているか。犯罪者でもないのに外国人だからというだけで指紋を採られるのは納得できない」

 法務省によると指紋採取はスキャナーで読み取る方式で、以前のような押なつとは違うという。

 ◇テロリスト予備軍

 来日する外国人は年間約七百万人。外国人を対象とした指紋押なつ制度は二〇〇〇年、在日韓国人らの「人権侵害」という強い抗議を受けて廃止された。だが、改正法により、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者ら一部を除き、日本への入国、再入国に際して再び指紋の採取が強制される。

 政府の管理下に入った指紋と顔写真は、他国の政府の照会に応じたりすることで国際的な犯罪捜査への利用も可能になるといわれる。

 また、改正案には、テロを行う恐れがあると認められる外国人の強制退去も盛り込まれたが、要件となる「テロの実行を容易にする行為」や「テロを行う恐れがある」という表現にはあいまいさが残る。

 人権問題に詳しい師岡康子弁護士は「あいまいなテロリストの定義が導入され、外国人を恣意(しい)的にテロリスト予備軍として強制退去させたり、誤認逮捕が起きたりする恐れがある」と指摘する。

 ◇日本人も監視対象

 日本の文化を学ぼうと来日して十年になる人権団体メンバーの米国人ルイス・カーレットさん(40)は「米国政府も9・11事件の後、テロ対策という美しい言葉を使って国民を管理しようとしてきたが、その陰で民主主義や自由は消えつつある」と懸念する。

 改正法の成立を契機に来秋にも、出入国の際に「自動化ゲート」が導入される見込みだ。日本人も希望者は事前に指紋情報を登録すれば、出入国手続きが簡略化される予定。しかし、その指紋情報もまた捜査当局の求めに応じて提供できることになっており「国民総指紋登録制度に向けた布石だ」との不安もある。

 リリアンさんは「単に外国人の人権問題とは言い難い。日本人こそが監視される社会へと近づいている」と訴える。
 



 
敷居を高くするだけでは 入国時指紋採取
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060519/20060519_001.shtml
 16歳以上の外国人に入国審査時の指紋採取や顔写真撮影を原則として義務付ける改正入管難民法が今国会で成立した。偽造パスポートなどを使って不法入国を企てる者や、別人に成り済まして入国しようとするテロリストなどを水際で阻止する目的であるという。

 治安対策のうえで、こうした人物に対して敷居を高くしていく必要があるのは当然だ。しかし、昨年1年間で日本を訪れた700万人を超える外国人の多くにとっては無縁のことだろう。

 政府は2010年までに来日する外国人を1000万人まで増やすキャンペーンを実施し、外国企業に対しても日本への投資促進を呼びかけている。現実には日本に住んで働く外国人も増えており、政府は高度な技術や知識を持つ優秀な外国人の受け入れにも積極的だ。

 日本は外国人に対して門戸を狭め、排除しようとしているといった誤った印象を諸外国に与えれば、観光客誘致や投資促進策にはマイナスである。改正入管難民法施行にあたっては、運用などについて慎重な検討がなされるべきだ。

 「中国や韓国などからの修学旅行生が増えているようだが、引率教師を含めて(指紋採取の免除など)特別扱いは考えていないのか」。参院法務委員会の審議ではこんな質問も出された。

 これに対し、政府は「現場で高校生と同じ年代の人物が修学旅行で来ているのかどうか、はっきり確定することは困難な場合もある」などとして、一律に指紋採取などを求める考えを示した。

 だが、これでは杓子(しゃくし)定規に過ぎるのではないか。日本に長く住む外国人の永住者や定住者もいったん出国し、再入国するときは指紋が採取される。日本でまじめに働き、平穏に暮らしている外国人には差別と映る可能性もある。

 衆参両院の法務委員会採決で、指紋の利用については国際的動向などを勘案し、実施時期を慎重に定めることなどの付帯決議がされたのも、当然だろう。

 入国審査時に指紋採取を義務づけているのは、現在は米国だけだ。それでも、米国への入国者は増えていると日本政府は言う。ただ、欧米では難民や移民を積極的に受け入れた歴史があり、人種差別や外国人差別を禁止する法制度が整備されているとの指摘もある。

 かつて日本に住む外国人は一部を除き外国人登録法に基づき指紋押なつが義務付けられていた。しかし、外国人差別であり、人権侵害との批判を受けて2000年4月に押なつ制度は全廃された。

 在留外国人による犯罪が相次いでいることも改正の背景にある。だが、外国人労働者の就労環境の不安定さや、その子どもたちが十分な教育機会が与えられていないことなど、受け入れ態勢にも不備がある。日本で暮らす外国人は着実に増えている。彼らが日本社会で能力を発揮できるような環境整備も急ぐべきだ。
=2006/05/19付 西日本新聞朝刊=

出入国管理及び難民認定法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26SE319.html







http://d.hatena.ne.jp/knt68/20060424/p1
http://d.hatena.ne.jp/knt68/20060409/p2
http://d.hatena.ne.jp/knt68/20060320/p3