岐阜県庁 裏金問題 ユニセフ

福祉基金や国連児童基金ユニセフ)などへの寄付約9000万円
寄付金はアカン

中日新聞 - 2006年8月3日
岐阜県の裏金4億6600万円
94年当時、全組織で

http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060803/eve_____sya_____008.shtml
 岐阜県庁の裏金問題で、県は3日、調査チームによる調査結果を公表した。県情報公開条例施行直前の1994年度当時、裏金づくりは県教育委員会を含む県全体で行われ、その総額は約4億6600万円と推計。現在の残高は約2億6500万円。調査チームは、県職員組合の管理口座などへの移し替えは当時の県幹部の指示と指摘。同口座に移し替えられずに職員らが保管していたうち約500万円は、職員らが処置に困って焼いたり捨てたりしたことも分かった。
 調査結果によると、移し替え直前の98年度当初の総額は4億4100万円。98年度当時の数字では、裏金のうち組合に集約された額は約2億5600万円で、うち飲食を含む組合活動などに約1億1000万円が流用された。集約分の現在の残高は約1億4600万円。組合に集約されずに各課や県職員らが保管している裏金の残高は約1億1900万円。
 県調査チームは、会計書類がなく事情聴取中心の調査だったため「さらに解明すべき点が残されている」と指摘。既に発足している弁護士による第三者組織に調査を委ねる。今後は裏金の県への返還のほか、関係職員の処分問題が浮上するとみられる。
 調査によると、情報公開条例の施行をきっかけに裏金づくりは行われなくなり、各課などが保管していた裏金は凍結状態になったという。99年4月の組織再編を前に、裏金の表面化や分散を避けるため、当時の副知事の指示で99年1月から組合への移し替えが行われた。移し替えが徹底されなかったことから、職員らの個人保管につながったとしている。
 組合に集約された裏金の使い道は、飲食を含む組合活動費などが約4300万円、組合員への生活資金などの貸し付けが約4500万円、訴訟関係の特別会計繰り入れなど約2000万円で、計1億1000万円。
 また、組合の口座に集約されなかった分ではこれまでに約9500万円が使われており、内訳は職員の懇談費、ユニセフなどへの寄付。約500万円は焼かれたり捨てられたりしていた。
 県は、すべての調査資料を第三者組織に提供する。

東京新聞 - 2006年8月8日
岐阜の裏金 本当に灰と消えたのか
流用、責任逃れの弁明?

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060809/mng_____tokuho__000.shtml
 岐阜県庁の裏金問題で、その一部の五百万円について「燃やしたり、ごみに混ぜて捨てた」という職員の爆弾証言が波紋を広げている。事実なら、究極の隠ぺい工作で、県民の怒りは収まりそうもないが、本当に灰と消えたのか。納税者の怒りの火元、公金の“焼却処分”の真偽とその犯罪性とは。(中里宏、橋本誠)
 「税金を燃やすなんて、信じられない。これだけ稼ぐのが、どれだけ大変なことか。税金を取るときはしっかり取るくせに、県職員は何をしているのか。もう払いたくない」
 岐阜県庁を八日に訪れた同県北方町のパート従業員の女性(28)は怒りをあらわにした。ロビーで高校野球を見ていた同県笠松町の会社員の男性(65)は「燃やしたなんて考えられない。県民として恥ずかしい。トップの人は『知らなかった』で済むもんなんですか」。
 
■抗議のメールや電話など1000件超
 約四億六千万円のうち一部が県幹部の懇談会やタクシー代などに化けていた岐阜県庁の裏金問題。約五百万円が焼却されたり、ごみとして捨てられたとする調査チームの発表があった三日以降、県内外から猛烈な抗議が押し寄せた。八日午後三時までに、電話が五百七十五件、メールやファクスが計六百四十五件。すべて「腹立たしい」「県民の恥」などと県を批判する内容だった。
 「大変厳しい言葉ばかりで、申し訳なく、返す言葉が見つからない。とくに多いのが『金を焼いて捨てたのが許せない』という声。もっともと思いますけども」と石原佳洋・行政改革課長は話す。
 八日は、当時県政のかじ取りをしていた梶原拓前知事が問題発覚後、初めて記者会見。「隠したとか、逃げたとか、不正な指示をしたとか、やましいことは一切していない」と、県職員組合管理口座への移し替えへの関与を全面的に否定した。
 しかし、四、五日に鳥取県で開かれたシンポジウムに招かれた際、参加者から「岐阜県には先進県として多くを学ばせてもらったが、今回の不祥事には失望した」と言われた話を引用しながら、「『裏金を焼却した』などという報道が大きな関心を呼び、全国的に影響を与えている」と余波の大きさにうつむいた。
 この日は、古田肇知事も定例記者会見で裏金問題に触れ、「組織的な広がりや規模にも、燃やしたということにも言いようのない衝撃を受けた。抗議のメールなどにはすべて目を通している」と述べた。
 五百万円のうち四百万円を焼却したとされるのは県教育委員会の職員。鬼頭善徳教育長は「不要な書類と一緒に焼却する書類として出してしまった。聞いたときはショックでした」。
 急いで燃やさなくてはならない切迫した事情があったわけではないといい、「『処理に困り果てて、思い余って』ということだ。前からの引き継ぎを抱えて、一人で悩んでいたのだと思う。本人にも会ったが、大きな責任を感じている」と話す。
 だが、「燃やしたというのは言い訳。使途不明金の処理をごまかしているだけでは」(前出のパート従業員)という疑問は県庁の内外でも根強い。二億五千万円以上がプールされた県職員組合の関係者は「組合に集約された金ではないので、コメントできない」と前置きしたうえで、「燃やすなんて常識的には考えられない」と首をひねる。
 
■調査チーム結論今月中の見通し
 残る百万円の処理を調べた調査チームの冨田成輝総務部次長も「金額的にも、状況的にも、真偽はにわかに信じ難い」と言う。調査結果はすべて弁護士三人でつくる「検討委員会」に報告されており、今月中には結論が出る見通しだ。
 裏金問題では、“焼却”処分以外にも問題になりそうな使い道は多い。まず、職員間の懇談会費など飲み食いに使ったと疑われる支出だ。裏金づくりに、水増し請求で協力していた各課や組合の取引先企業を支援するための約二千五百万円の“助成”もある。
 多重債務者の職員に対する貸し付け約五百万円は全額未返済で、福祉基金や国連児童基金ユニセフ)などへの寄付約千九百万円という支出も。
 元検事の土本武司白鴎大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「一番犯罪性が強いのは飲み食いに使ったケース。さらに、公的な用途以外に使った場合は犯罪性を認めることができ、多重債務者への貸し付けや企業への助成も業務上横領や背任に問える」と解説。その上で「県警や地検は直ちに捜査にかからなければならない」と指摘する。
 また、“焼却処分”したとされる四百万円については、罪に問えるのか。
 土本氏は「実際は個人的に使ってしまい、責任逃れの弁解ではないかとも推測できる」としながらも「原資は税金なのだから、捜査当局は『本当に燃やしたという証拠を出せ』と厳しく追及すべきだ」。
 さらに、本当に燃やした場合については「経済的用途に使う意思がないので、横領や背任などの財産犯に問うのは難しくなる。ただ器物損壊罪に問うことはできるかもしれない」と話す。
 一方、評論家の板倉宏氏(刑法)は「お金を燃やすということは所有権者に損害を与えることになるので背任罪や業務上横領罪に問える」という見解。架空の旅費請求などの裏金づくりについても「やり方いかんでは詐欺に問える場合もある」としながらも「出す方も分かっていて出していれば(立件は)難しい。その方が問題だが」と苦笑する。
 
■少なくとも2回自らただす機会
 調査報告では、県庁がプール金の発覚を恐れて職員組合に移した時期は第一次集中期と第二次集中期に大きく分けている。
 第一次は一九九九年度の組織再編を前に所属ごとにプールしていた金の散逸や表面化を恐れたのが動機。第二次は二〇〇四年春に予定されていたペイオフの(全面)解禁に備え、金融機関の口座管理が厳しくなったことで表面化を恐れたのが理由とされる。逆に言えば、少なくとも二回は、自ら不正をただし、公表する機会があったことになる。
 危機管理コンサルタントの田中辰巳「リスク・ヘッジ」代表は「民間にも共通するが、過去の不正には現在の上司や大先輩が関与していることが多く、明らかにしにくい」と指摘。その上で「四月に公益通報者保護法が施行され、内部から情報が出やすくなった。ガラス張りの社会、つまり『隠せない時代』が来たという認識が必要だ」。
 さらに、今回のケースについて「裏金づくりに加えて、隠したという罪が上乗せされた。重要なのは、隠した時点で過去の問題が現在の問題になるということ。不祥事は漬物と違っていくら置いてもおいしくなることはない。ますます腐るだけなんです」という。
 全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「隠ぺいのために情報公開の対象にならない職員組合に裏金を移す手口は聞いたことがない」と指摘しながら、こう憤る。
 「岐阜県庁はこれまで『裏金はまったくない』と言い続けてきた。実態は裏金づくりと情報隠ぺいの究極の形だ」
 
<デスクメモ> 川崎市内の竹やぶで見つかった二億円、埼玉県内の用水路の千八百万円。いずれも、訳ありのカネだが、公金を燃やすというのは前代未聞だ。その昔、スナックの客が「災いの元」と千円札に火をつけようとした際、ママさんが一喝した。「そのお札に染みついた汗と涙の結晶を何だと思っているのよ!」 (吉)