日本の砂防技術は世界一です。

雲原砂防、登録記念物に
文化審答申、防災面でも効果発揮
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006052000033
 文化審議会阿刀田高会長)は19日、夫婦岩で知られる景勝地「二見浦」(三重県伊勢市)を名勝にするなど計18件を新たに史跡、名勝、天然記念物に指定するよう小坂憲次文部科学相に答申。京都府福知山市の雲原砂防関連施設群など2件を初の「登録記念物」にするよう求めた。京滋ではほかに史跡の追加指定3件、重要文化的景観の追加選定1件が答申された。
 雲原砂防関連施設群は福知山市北部の由良川水系上流にあり、総延長約12キロ。1934(昭和9)年の室戸台風の被害を受け、当時の雲原村長、西原亀三氏が尽力し、抜本的な治水工事を目指し着工した。
 計画段階からの水系一貫工事としては全国初。18年に及ぶ工事で、土砂の流れをせき止める堰堤(えんてい)や水流を緩やかにする階段状の設備など流路を整備した。農地の改良や農家移転なども行い、耕作地の増加で地域の発展にも貢献した記念碑的事業として歴史的価値が高い。
 二見浦は、歌人西行の和歌にも登場する。大小2つの岩が寄り添う夫婦岩を中心に海神を祭る霊場で、日の出を拝む名所としても知られている。
 ■防災面でも効果発揮
 福知山市雲原地区は山間地のため、繰り返し土砂災害や水害を受けてきた。室戸台風では、当時の雲原村の農地が全滅、道路は決壊し、橋も流出した。砂防工事は安心で安全な村づくりに向けた住民の悲願だった。
 工事には住民も協力し、土地を無償提供したり、交換しあった。村民自ら労働者としても参加した。自治会長の今井啓靖さん(65)は「先祖が一生懸命取り組んだだけに、大切にしようという思いは強い」と話す。地元住民は毎年、河川沿いの掃除を続けている。
 工事の完成以降、災害のなかった雲原地区に一昨年、台風23号が猛威を振るった。地域は孤立、崩れた護岸や、土砂で埋まった堰堤もあった。今も一部で復旧工事が続く。だが今井さんは「堰堤などがなかったら、もっと被害が大きかったのでは。防災面で果たす役割は大きい」と評価し、今回の登録を喜ぶ。
 京滋関連の追加指定は次の通り。
 【史跡の追加指定】
 長岡宮跡(向日市) 長岡京の宮殿跡。昨秋の発掘調査で、朝堂院南面回廊が途中で南に折れ、先端に楼閣とみられる建物があることが確認された部分を追加指定する。平安京と同様、唐にならった本格的な都だったことが実証された。
 正道官衙遺跡(城陽市) 築地跡や整然と並ぶ建物群跡が良好な状態で残り、久世郡衙に比定される奈良期の官衙遺跡。昨夏の発掘調査で、南門南側に造営時の造成跡や溝が新たに見つかり、領域の拡大が確認された部分を追加指定する。
 野路小野山製鉄遺跡(草津市野路町) 8世紀半ばの遺跡で、飛鳥から平安期を通して全国最大の規模を誇る。官営製鉄所として紫香楽宮藤原京の造営に向け、鉄を供給したとみられる。追加指定部分(1部1042平方メートル)からは、等間隔に並んだ製鉄炉4基などが確認された。
 【重要文化的景観の追加選定】
 近江八幡の水郷(近江八幡市円山町など) ヨシ製品づくりを支えたヨシ群落や、琵琶湖との水運に利用された八幡堀などが残る。追加されたのは、西の湖に接する円山町(90世帯)、白王町白部(47世帯)の両集落の13・7ヘクタール。
京都新聞) - 5月20日10時49分